父さんはいつだって正しかった

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「っっ」  ……なに、これ。  なんなのよ、これは。 「うううっ……」  どうして。どうしていなくなってから、こんな優しい言葉を投げかけるの。  こんな一方的に、酷い。あんまりだよ。  父さん、父さん。  どうしてあたしに、謝ることすらさせてくれないの。  食卓で、気難しそうな顔をしながら分厚い本に視線を落としていた父さんがまぶたの裏に蘇ってきた時、もう、ダメだった。 「ううっ。うわあぁぁぁぁっ!! ごめんっ、ごめんねっっ、お父さんっっ」  この家に、もう、父さんはいない。  小さな子供のように、慟哭した。  今が夜の遅い時間だということも、家族を起こしてしまうかもしれないということも気にかける余裕すらなかった。通夜でも葬式でも、一粒たりとも涙を流さなかったのに。  泣いて、泣いて、泣いて。  その日の夜は、身体中の水分がなくなってしまんじゃないかと思うぐらい、涙を流し続けた。
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