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「今は男子部も中間テスト前だから、みんな早く下校するだろうし、ここで待ってたらどうにかなるかなって。よかったぁ、読みが当たって」
七瀬は妙に自信満々だった。すると結城が恨めしげにぼそりと言う。
「七瀬……俺、テスト明けにサッカーの大事な試合あんだけど。結果でほぼ今年のレギュラー決まるって言われてるやつ」
「へえ。そうなんだ?」
「だからさー」
結城はちら、と七瀬を見る。
「うん?」
「つまり、試合がんばってとか。ねえのかよ、そういうの」
「ああ、そうか。がんばれ蒼介。ていうか蒼介ならきっと勝てるし選ばれるから、心配しなくて大丈夫!」
「っ、だから」
「え、なに?」
七瀬が首をかしげるので、僕は悪いと思いつつもついに吹き出してしまった。
「高遠くん? なぜそこで笑う?」
「あのね春野さん。結城も欲しいんだってさ、手作りクッキー」
「ええっ、蒼介、そうなの?!」
「べっ、別に俺はそういうわけじゃ!」
僕は慌てふためく結城の肩をたたくと、七瀬に向かって言う。
「まあ、そういうわけだから。今もらったこれ、少しだけ結城にわけてやっていいかな」
すると七瀬は真剣な顔で首を横に振った。
「高遠くん、それはダメ」
「……」
「だって私、下心あってそれ高遠くんに渡したんだもん」
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