僕はその言葉を聞くたびにニンマリ笑う

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出会って一か月もしないある日の夕方。僕たち新入社員と同じ定時に、珍しく彼女がエレベーターを待っていた。 「高橋さん、今日帰るの早いですね」 「あら、真壁君。友達に誘われて、合コン」 なんか化粧、濃くないですか? 「気合い入れて行ってくるわ」 あなたはいつも通りの方がキレイだ! と言いたかったけど、言えなかった。 翌日彼女が明らかに幸せそうな顔でぼんやりしていた。 「高橋さん、大丈夫ですか?」 「え? あ、大丈夫」 「さては、彼氏、できましたか」 「え? え? わかっちゃった?」 分かりやす過ぎます!  こうして僕は告白する前に撃沈されてしまった。 その頃、僕は彼女とペアを組んで得意先を回っていた。車の中で会話する幸せな時間が、その日から地獄の時間に変わってしまった。
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