8人が本棚に入れています
本棚に追加
「彼ね、すごくおしゃれなの。センスがいいのよ」
「そうですか」
僕は相槌を打つしかなかった。
*
「彼の車、ツーシーターでね、とてもかっこいいの」
「それ、めちゃ高いですよね」
「うん。ドイツ車だし。彼に似合う女にならないとね」
あなたはそんな無理しなくても、今のままがかわいいです! と言いたいけど言えなかった。
*
「彼ね、ハンバーガーが好きなの。だから、デートはハンバーガーばっかり」
「マジですか。野菜食べてます?」
「彼、好き嫌いが多いから、いつも彼の好きなもの食べてる。彼、お肉しか食べられないの」
おい、彼氏! 高橋さんを偏食に巻き込むな! と言ってやりたいけど僕の出る幕じゃない。
*
「最近彼が忙しくて、デートが減ったの。でもね、いつも夜中まで電話してるの」
「高橋さん、疲れた顔してますよ。何時まで電話してたんですか」
「3時かな」
おい、彼氏! お前、高い車と洋服買って、デート代がねえんだろ! まったく。高橋さんはどうしてそんなやつを選ぶんだ?
*
「おはよう、真壁君」
「おはようございます。ほっぺに、おいしそうなニキビができていますよ。つぶしていいですか?」
「もう、いやだ~。さっきもさんざん紗香に吹き出物って言われたの。これは大人ニキビっていうのよ。つぶしちゃダメ」
「遅くまで電話してるからですよ。さっさと寝てしまえばいいんです」
「でもね、彼の顔、見たいじゃない?」
「まさか、ビデオ通話?」
「そうよ。彼に素顔なんて見せられないから、化粧していて……。ここだけの話、化粧したまま眠くなって、寝ちゃったりしたのもいけなかったかも」
なんですかそれ! 僕なんか、あなたの素顔が見たくてたまらないのに!
最初のコメントを投稿しよう!