僕はその言葉を聞くたびにニンマリ笑う

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彼女はレストランの前で驚いていた。居酒屋に行くと思っていたようだ。席に案内された時の、彼女の幸せそうな顔を見られただけでも、今日、僕は満足だ。 前菜が運ばれてきた。 「真壁君こんなおしゃれな店を知ってるのね」 「せっかくのデートですから。先輩、しっかり野菜食べてください」 「デートって……」 「僕はもう誰にもあなたを取られたくないから」 自分でも驚いた。僕はこんなに強引な奴だったかな? 「私ね、あれからいろいろ考えたんだ。彼に合わせるために、すごく無理してたなって。真壁君なら同じ男でも、こんなにリラックスしてるのにね」 彼女のふんわりした笑顔がかわいかった。 それ、どういう意味ですか。そういうことだって思っていいですか? 勘違いしていいですか? 僕は彼女の瞳を見つめた。そして決心した。今だ。何も告げずに誰かに取られるくらいなら、フラれた方がましだ。 「先輩、僕はあなたが好きです。初めて会った時からずっと好きでした。一目ぼれだったんです」 これだけ言えばスルーされないだろう。 きょとん、とした天然な表情がかわいい。やっぱり、気づいていなかったんだ。 「で、でも、私、あなたより年上だし、ついこの前まで彼氏いたし」 「関係ありません。僕があなたを好き、ただそれだけでいいのでは?」 彼女が真っ赤になった。言葉が出ないようだ。速攻で断られなくてよかった。 「とにかく、今日からお試しでも構いません。僕の彼女になってください」 「で、でも、会社ではどうしたら……仕事が……」 「仕事中は私情を挟みません。会社では秘密にします。そのかわり、会社を出たら、たっぷりかわいがってあげます」 僕はきっぱり言った。彼女は耳まで真っ赤になった。 僕たちは休日にデートして、家に帰ってからはSNSで話した。もちろん、夜遅くならないよう、健全な交際だ。
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