食べ物にまつわるショートストーリー

ダイエット2-8

春菜は体重を減らすための情報について、ネットで検索してみた。
すると、揚げ物は大量の油を使っているためダイエットの敵。ご飯やパンなどの炭水化物も太りやすいため控えめにしたほうが良い。
もちろんケーキやチョコレートなどの甘いものは脂肪として蓄積されるためNG。
どれも春菜の大好きなもので、春菜は大きなショックを受けた。

その日の夕食時
今日のメニューはから揚げだった。母特製のタルタルソースがたっぷりとかかっている。

もちろん、春菜はからあげは大好きだ。
しかし、、頭の中ではネットで調べたばかりの情報が駆け巡る。

『お母さん、私、から揚げいらない。』
春菜が母親に伝えると
『どうしたの?からだの具合でも悪いの?』
普段なら喜んで食べるはずの娘の言葉に母親は心配そうに声をかける。
『別に、、悪くないよ。』
『じゃぁ、どうしたの?』
不安そうに、重ねて聞く母親に春菜はぽつんと口にした。
『私、友達に比べて太ってるから。』
春菜の口から出た言葉に母親は目を丸くしている。
『何言ってるの！あなたは全然太ってないわ。ちゃんと食べなさい！』
我に返った母親が強い口調で言うが
春菜はそれでも母親の言葉に納得できず渋っている。
一向に箸を進めようとしない娘の様子に
『いい加減にしなさい！あなたは成長期なのよ！大事な時期にちゃんと食べないと、栄養が足りなくて病気になってしまうわよ！』
母親はしびれを切らし、大きな声で春菜叱る。

『だって、今日友達と水着を買いにいったら、サイズが合わなくて私だけ可愛い水着が着られなかったの。私だって友達みたいに細くなって可愛い水着を着たり、おしゃれがしたいの！』
『私、ダイエットするから！カロリーの高い揚げ物なんてこれからも絶対に食べないから！』
正論をたてに頭ごなしに叱られたことに反発し春菜は母親にそう叫ぶと、箸を叩きつけ、から揚げどころかご飯も、味噌汁もろくに手をつけていないままのおかずを残し、食卓を立つ。
『こら！春菜！』
『姉ちゃんが食べないなら、このから揚げ俺がもらっちゃうぞ~』
聞こえてくる母親と弟の言葉を無視し、春菜は二階にある自分の部屋にこもった。