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カレーライス1-2
理奈の実家への挨拶は先週既に済んでおり、真面目で人当たりも良い卓巳はすぐに理奈の両親に気に入られ、すんなりと結婚の許可を得ることができた。
卓巳の実家への挨拶に際し
肩の荷が下りて既に気楽な様子でいる卓巳に対し、理奈はそわそわして落ち着かない。
『理奈に会うこと、両親は前から楽しみにしてたんから大丈夫だよ。』と卓巳は言うものの、その日が近づくにつれ緊張は高まる。
このタイミングで子供の頃に食べたカレーライスのことを思い出したのは、久しぶりにカレールーのCMで家族でカレーライスを食べる姿を見たこと、そして、婚約者である卓巳と今後家庭を作っていくことを漠然と考え始めていたからだろうか。
当日、お土産のケーキを手に理奈と卓巳は電車にのって卓巳の実家に向かった。
玄関前に到着し、理奈は早速呼び鈴を押そうとする卓巳を制し大きく深呼吸する。
卓巳は苦笑しながらも理奈が気持ちを落ち着かせるのを待ってくれた。
いよいよ呼び鈴を押し、『ただいま。理奈連れてきたよ。』と卓巳が声を掛けると、奥から卓巳の母親である女性が出てきて
『ようこそ、いらっしゃいました。卓巳の母親の百合子です。今日は理奈さんにお会いできるの楽しみにしてたんですよ。』と年の割に若々しい笑顔を浮かべて迎えてくれた。
『はじめまして。斎藤理奈です。これ、ケーキなんですが良かったら召し上がってください。』カチカチになりながらも挨拶をし、お土産のケーキを手渡す理奈を百合子は
『まあ、わざわざどうもすみません。どうぞ上がってください。』と迎え入れてくれた。
百合子が紅茶を入れてくれ、3人でテーブルに向かい合うと
『ご出身はどちら?』『理奈さんのご両親はどんな方なの?』『ご兄弟はいらっしゃる?』
『卓巳とはどこでお知り合いになったの?』
百合子から次々と質問が飛び出した。
『おい母さん、そんな次々と聞かないでくれよ。』途中で卓巳がたしなめてくれたが、
『いいじゃない。卓巳のお嫁さんになる方だもの。よく知りたいのよ。』
と母親は言い返し、質問を続ける。
笑顔を浮かべる百合子からの質問に、詰問されているわけではないが、どうしても緊張してしまい、理奈はぎこちなく答えていった。
しばらくして質問が落ち着くと、百合子は紅茶を一口飲み、
『そういえば、お父さん遅いわね。』と呟く。
卓巳の父親は建築会社を経営しており、60になる今も現役で仕事をしているそうだ。
今日も仕事があるが、昼過ぎには終わる予定と聞いていたそうだが、、
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