カレーライス1-1

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カレーライス1-1

もう何年もカレーライスを食べていない。 りなはふと気が付いた。 子供の頃は家でも学校給食でもカレーライスは定番のメニューで、口にする機会は多かった。 給食のカレーは、子供向けに柔らかく煮込まれた野菜の優しい甘さのする、とろっとした食感ものだった。クラスでも人気があり普段は余ってしまうことの多い大鍋の中身もカレーライスがメニューの時はいつも空っぽになっていた。 家では、大きくカットされたごろっとした野菜が入っており、市販のルーで煮込まれたもので、ルーは子供達の成長に合わせて甘口から中辛に変わっていった。どこの家庭にでもある味といえたが、カレーライスは理奈と二歳年上の兄だけでなく、母親も父親も大好きで大鍋いっぱいに作られたカレーはいつもあっという間になくなっていた。 子供の頃は大好きだったカレーライスだが、理奈は成長するにつれ、外食の機会が増え世の中にはカレーライス以外に美味しいものが沢山あることを知り、 また大学進学を機に一人暮らしを始め、節約のために普段は自炊しているとはいえ、鍋一杯に作ることが基本のカレーを作っても自分一人で食べられるはずがなく、冷凍保存してまで食べたいという思い入れもなくなっていたため、自分で作ることはなかった。 カレーライスから遠ざかっていた理奈が久しぶりに思い出したのは、三年付き合った彼氏にプロポーズされ、今週末に彼のご両親に挨拶に行くというタイミングだった。
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