第3章:陽はまた昇る

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少年の願いを叶える事は難しいかもしれない… 時に残酷な結末になる事も多いのだが 神様は自然の摂理ってヤツを()(かく) 大切にしたがる。 死んだ人間を生き返らせる様な事は 基本的にしないし 最近じゃあ結ばれない二人の男女を恋人に する事さえ嫌がる。 カミルだってもう10年以上も キューピッドの仕事をさせて貰えないのだ。 それでも母親を少年の夢枕に立たせる事なら 出来るかもしれないし 例え願いが叶わなくても少年の歌声は 天国の母親にきっと届くに違いない。 才能を開花させた少年がやがて大人になり ウィーンのオペラ座で歌う日だって 来るかもしれない。 星が輝く夜空の様な壮大さと深い哀しみを 背負った少年の歌声は大観衆を 魅了するに違いない。 時が経てば母親を早くに亡くした経験が 自分の糧になったと感じる日だって必ず訪れる 水平線まで伸びた光の帯が段々薄くなると 太陽が昇り始め白い砂浜を照らし出す。 どんな人間にだって明日()はやってくる。 願い事なんて叶わなくても人間は自分の力で 人生を切り開く(たくま)しさがあるのだから。 暖かい太陽光を浴びながら カミルは何故か背筋に寒気を感じる… なんか大切な事を忘れているような… 「はっ!そうだ。 今日は朝から近くの教会でミサがあった。 また願い事を聞かなくちゃ! これは昨夜から徹夜の仕事になりそうだ…」
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