第2章:少年の願い

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研磨が進むにつれ夢原石は輝きを増す。 ルーペを覗き込み慎重に仕上がりを 確認するカミル。 完成間近で砂粒程度の茶色い内包物(インクルージョン)が あるのを発見した。 少年は母親が亡くなる前日に 親子喧嘩をしていた。 家庭の貧しさと行商の仕事に嫌気が指し 咄嗟に言ってしまった一言 「僕なんか生まれてこなけりゃ良かった」 その一言が喉に刺さった魚の骨のように 少年の心にいつまでも苦い痛みを残している 夢原石に傷が付かない様に そして少年の心の(わだかま)りを無くす為 布巾を当てて丁寧にその内包物(インクルージョン)を取り除き 2~3回研磨版に夢原石を擦り付けると 磨かれた裸石(ルース)が完成した。
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