第1章:夢原石

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第1章:夢原石

「あぁ…そうだった! 今夜は頼まれ事があったのに すっかり忘れていたよ」 カミルは羽毛のフカフカ布団に身をくるめて 眠る直前に仕事(・・)があったのを思い出した。 コンソメスープとライ麦のパンを お腹いっぱい食べて終えて 今夜は寝る所だったけど そうも言ってられない。 ロフトベットから身体を起こし 天窓を開いて夜空を眺めると 晴天の空に星々が煌めいており 流星が走り抜けるのが見えた。 カミルは天窓から慌てて 工房(アトリエ)の屋根上へ這い上がると 両手を天に(かざ)して祈るように(まぶた)を閉じる。 すると流星が落ちた方角からキラキラした 微粒子の様なものが群れを成して カミルの両手に集まって来た。 それらはカミルに近づくにつれ形を成し 赤、青、緑…様々な色模様の石が フワフワ宙に浮かんで来る。 「ごめんね…『夢原石』全部は 拾えなかったかな?」 カミルはそう(つぶや)くと夢原石と呼んだ色彩様々な石を両手で丁寧に包み込み 持ってきた木箱の中に仕舞い込んだ。 木箱の中には綿が敷き詰めてある。 何しろこの夢原石ってヤツは まるでガラスの様に繊細で とても壊れやすい。 (ひび)でも入ったら大変なのだ。
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