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次の日から、真麻は授業以外のほとんどの時間を美景と飛鳥の尾行に費やした。
二人はわざわざ会って話すことはないものの、廊下で会えば必ず挨拶をしたり世間話をしたりするなど仲は良いようだった。
よく美景の横にいる夕詞という少年は僕に気づいているらしく、警戒してよく後ろを振り返っていたが、当人達は気付いた様子すらなかった。
そうして二週間ほど調べてわかったことと言えば。
「あの二人、砂音寺 快李を嫌っているのか·········?」
二人は快李とすれ違うといつも顔をひきつらせて早く立ち去ろうとしていたし、試しに一般生徒に命令して二人に快李の話をふらせてみたが、あからさまに話題を変えたりするなど兄弟らしくない反応だった。
ていうか、それ以外にわかったことはあまりない。
他に気付いたことといえば、美景は夕詞に関する事なら気持ち悪いほどに鼻が利き、飛鳥は美景と関わると何故かツンデレっぽくなる、ということくらいだ。
こんなことがわかって一体なんの役に立つのか。
本来の目的だった、快李の弱点を見つける、ということからどんどん離れていっている気がする。
そう深く考え込んでいた真麻は、後ろから近づいてきた足音に気付かなかった。
真麻は、突然肩に触れられたことに驚いて後ろを振り返った。
するとそこには、快李、美景、飛鳥の姿が。
快李と美景は表情の読めない笑顔で、飛鳥は厳しい目で真麻を見ており、真麻は三人が揃っているなんてと不思議に思った。
美景がにこやかに笑いながら口を開いた。
「真麻 八尋さん、ですよね。随分長いこと俺たちを見張っていたようですが、もう用は済んだんですか?」
「········ああ、はい。そうですねぇ。」
どうやら美景は見張られていた事に気付いていたらしい。
その事に驚きつつも、表情には出さないように飄々と答える。
今度は飛鳥が真面目くさった表情で言った。
「校則には尾行を禁止するものはありませんが、親衛隊とその対象の衝突を防ぐために、ストーカー行為と間違えられるような行動は暗黙の了解としてしないことになっている筈です。情報通の新聞部が知らないはずがないですよね?」
真麻は当然知っているが、それを認めてしまえば自分の首を絞めることと同じ。
いや、そもそも三人に追い詰められるほど悪いことはしていないんだが。
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