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こうして俺の仕事が余計に増えているんだけど、正直に言うと、会長たちのせいだけじゃないんだ。
会長の言う通り、俺が善意だけで引き受けた仕事も多い。
生徒会と風紀は仲が悪いけど、それでも風紀委員が困っていたら手助けしたり、小柄な子が多い図書委員の代わりに重い本を運ぶ仕事をしたり、親衛隊の行き過ぎた言動を見かけたら諌めたり。
············あれ?
身体的な事で言ったら、むしろこっちの方が疲れそうな事のような。
そういえば昨日サッカー部の助っ人に行ったんだった。
それで体から変な音がするのか。
そう一人で納得しながら、資料をコピーして、まとまりごとにホッチキスで留めていく。
まあ、これでも今は朝だから比較的ゆっくりできてるんだ。
これが夕方になって生徒会役員のみんなが集まりだしたら、すぐに騒がしくなって········
その時、隣の部屋からパリンッと何かが割れる音が。
次の瞬間、別棟にも聞こえるんじゃないかという程の絶叫が、部屋中に響き渡った。
誰かいたのか、気付かなかった·······
っていうか、今の声は八重の······?
ホッチキスを置いて立ち上がり、隣の部屋の扉を開ける。
隣の部屋には各部活動の記録や学校の設備に関する資料が保管してある所なんだけど·········
ああ、嫌な予感しかない。
扉の向こうには、掴み合いの喧嘩をしている八重と、文字がほとんどわからない程何かで汚れた紙の束が散らばっていた。
その書類は、たしか最近、俺がその棚にファイルに入れて置いていたと思うんだけど。
生徒会のみんなにも必要な物だからってコピーも渡したはず。
そう思いながらもう一度二人を見ると、二人はお互いを睨んでいて俺には気付いていない。
「だいたい紅亜が悪いんじゃないか!この部屋にコーヒーを持ち込むなんて!!」
「なんだよ!元はと言えば蒼亜が資料のコピーを僕の分まで無くすから此処まで来て元の資料を探すはめになったのに!!朝早いのに、ついてきてって言ったのは蒼亜だろ!!」
「「········このちんちくりん!!チビ!!」」
「············二人とも、それ、ブーメランだよ。」
思わず俺が声に出して突っ込むと、二人が揃ってバッと振り返った。
そしてすぐに俺に抱きついてきて泣き出した。
「「うわあああん!!ごめんなさい、直くん!!コピーは無くしちゃったし、書類にコーヒーこぼしちゃった!!!」」
ひんひん、ぐすぐすと泣いて謝る二人に、思わず苦笑する。
やや癖のある二人の頭を優しくなで、安心させるように優しく話しかける。
「大丈夫だよ。パソコンに原案があると思うし、無かったとしても、それは最近作ったやつだからある程度内容も覚えてるから。」
そう言っても二人は落ち込んだままだ。
まあ、二人はいたずら好きだけどミスをすることは少ないしね。
珍しく堪えたんでしょ。
俺はあまり見ない二人の沈んだ顔を見て、仕事が増えたのに何となく楽しい気分になった。
これが不運の始まりとも知らずに。
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