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「ゆ、夕詞、一体どうしたんだ。今の学校が嫌なのか?」
何とか立ち直った旦那様が顔面蒼白ながらも夕詞様に聞く。
長年夕詞様を見てきた俺だってビックリだよ。普通に評価の良い今の学校から何故あの学園に転校したいのか。夕詞様の性的嗜好が変わった様子など一度もなかったのだが。
「······今の学校は良いところだよ。でも···」
夕詞様が長いまつ毛を震わせて目をふせる。
「でも、みんなして僕を子供扱いするんだ!僕が良いなって思ってた子に頑張って話しかけても、なついたと勘違いされて、まるで妹が出来たみたいって······!」
そう言って顔を赤くする夕詞様は確かに可愛い。サラサラの髪に長いまつ毛、小柄で細い体、人形のような小さな顔。おばあ様譲りの金髪と碧眼はご家族の中でも一番艶やかだ。
「僕はこう見えても空手部の部長だぞ!大きな大会で何度も優勝して、もうか弱く見えないと思ってたのに······!」
いや、それはどう考えて も無理だろう。夕詞様はかわいすぎる。俺は夕詞様より可愛い人に会ったことないぞ。ああ、夕詞様可愛い‼さすが俺のアイドル兼心の癒し!
勿論、そんな事を考えているとは感じさせなように真面目な顔で旦那様の後ろに控えているが。
「···わかった。夕詞がそこまで言うのなら、転校を許そう。」
おっと、いつの間にか話し合いは終わっていたようだ。花が咲き誇ったような顔の夕詞様と疲れ切った顔をした旦那様がこれまた対照的だな。
夕詞様がスキップしそうな勢いで部屋を出ていく。何であそこの学園を選んだのかは聞いていなかったが、俺には夕詞様の無事を祈ることしかできない。
神よ、どうか、俺の癒しが穢されませんように。
そう祈っていた俺に、旦那様は信じられないことをのたまいなさった。
「頼む、美景(みかげ)!どうか夕詞についていって、陰から守ってやってくれ!」
んん?ミカゲって誰だ?この部屋には旦那様と俺しかいないが······。
ははは······
俺かよ⁉
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