危機的状況

20/25
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
別れて1ヶ月も過ぎたある日の夜、尚也から電話が掛かってきた。 『あ、俺だけど。久しぶりだな、……梨沙、元気だったか?』 忘れたはずなのに………。 久々に声を聞いて胸がときめいた。 「なに? 何か用?」 『あ、あぁ、まだ、カネを返してなかっただろ。今、アパートのそばまで来てるんだ。ちょっと返しに行ってもいいかな?』 せっかく忘れられそうだったのに、会えばまた未練が出てきそうで怖かった。 だけど、一目でいいから逢いたいという欲求に負けてしまった。 「そう、じゃあ、返して」 電話を切ったあと、すぐに鏡をみて髪を整え、簡単なメイクをした。 尚也はわたしの変化に、少しは気づいてくれるかな? あんなに若くて可愛い子と付き合ってる尚也には、わたしの些細な変化なんてどうでもいいんだろうな。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!