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「これ、借りてたカネ。遅くなって悪かったな。利息を足しておいたから。じゃ、じゃあ……」
尚也はまだ何か言いたげに、遠慮がちにわたしを見つめた。
「ありがとう。元気でね。お幸せにね」
恨み言のひとつも言えず、泣き出しそうな気持ちをこらえて微笑んだ。
「お幸せにって、、そんなこと、そんなこと言うなよ!」
尚也が急に怒ったような顔をした。
「え? 」
「梨沙、俺が悪かったよ、謝る。またやり直してくれないか? 俺、おまえじゃなきゃダメだ。それがわかったんだ。頼むよ、梨沙」
「尚也………」
返事をする前に、涙があふれた。
「梨沙、こめん。本当にごめん」
玄関で尚也に強く抱きしめられた。
この匂い、この温もり、尚也、本当にわたしのところへ帰って来てくれたのね。
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