ハジメの予感

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「──リキヤくんは無戸籍、タクヤくんもそうかもしれない、カナさんは父親からの性暴力を受けてた、他のコも家庭に問題ありの場合が多いわね」 「うん……。末端の連中はグレているだけなのが多いけど、幹部とか側近クラスになると……」  ハジメの言葉を聞いたあと、葵は考えをまとめようとうろうろして、突然止まるとスマホを取り出してツイツイと何かを探す。そしてそれが見つかったようで、目を閉じて仰ぎながら呟く。 「……うん、……けど……しかし……ならば……ハジメ」 突然名前を呼ばれて驚く。 「ハジメからみてタクヤくんはいい人? 悪い人?」 「悪い人に決ってるじゃん」 「なら言い方を変えるわ。タクヤくんはいい人じゃない? 悪い人じゃない?」 「……」 「考えないで。直感でこたえて」 「あのね……怒るかもしれないけど……悪い人じゃないって感じるの……」  詐欺、恐喝、殺人未遂、誘拐未遂、これだけやれば十分[悪いヤツ]なのに、ハジメはそう感じてしまったのだった。 「──怒らないわ。なぜなら私も同じ推論に達したから。  この考えに至ったとき自信が持てなかったわ。でもハジメの直感と同じだったから、はっきりわかったの」 「あたしの直感なんてアテにならないわよ」 「そのまんまならね。例えて言うなら山の中で迷ったとするでしょ? 私は周囲の情報を分析して助かる道を探すんだけど、ハジメは直感で方向を当てるのよ。  今回の件だって、セントレアに向かうように言ったでしょ? 手段としては足りないけど解決の方向としては当ってたじゃない。私はハジメの直感を信じてるの」 「アテになんないと思うけど。で、結論はなに?」 「あのね、タクヤくんは夏生くんを救おうとしたんじゃないかな」 「なんでそうなるのよ」 「私達はあとから気づいたけど、タクヤくんは夏生くんがDVを受けてたの知ってたと思うの。カナさん経由でね。 で、家庭に問題のあるコ達を救いたいというのが彼の行動原理だと思うの」 「そんなことないでしょ。それじゃ命を狙う意味がない」 「仮定として、ハジメがいなかった場合よ。殺人予告があった、外から殴り込みがあり本当だと思わせる、今度は身内に襲われて、警察もしくは隠れ家に行くことになる、そして外で誘拐となる。この場合、警察や組の連中は犯人は誰だと考えるの」 「そりゃあ、殺人請負サイトの連中だよね。でも、それが意味はあるの?」 「もちろん。それがあるから警察は江分利家に家宅捜索できるんじゃない。そして多分、夏生くんにDVの証言をさせるか証拠をネットに流して公の場で組やお父さん、組長を非難の的にして救おうとしたんじゃないかな」
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