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エレベーターが六階に到着する。
油断なく千秋とハジメから降りて、次に夏生そして葵が出る。
「無事到着かな」
「っぽいね」
「そうでもねぇよ」
千秋とハジメの会話に割り込んできた男の声に、二人は油断なく構える。そこには鎧武の隊服を着た男が三人いた。
確実に何かしらの格闘技を持っている雰囲気をまとい、敵意むき出しでこちらを睨んでいる。なかでも真ん中にいる巨漢の男は特に鋭い。
「よくここまでたどり着いたな、ラスボスステージってヤツだ」
巨漢男がスマホを取り出してハジメ達に向ける。そこから聞こえてきた声には聞き覚えがあった。
「タクヤね」
「そうだよハジメちゃん。安心しな、ここには十一人もいない、この三人だけだ」
その言葉に全員が、えっと思う。その会話は今さっきしたばかりだからだ。
まずはケイ、それから葵と千秋が意味を理解する。
「なんでそのことを」
「落ち着きなさいハジメ、ようやく謎がとけたわ。ナッキーね」
「なんのこと」
「盗聴されてたのよ。私は来たばかりだから関係ない。ハジメも葵もタクヤだっけ、ソイツに関係ない。接触した可能性があるのはナッキーだけ。お手軽に盗聴するんなら……スマホに盗聴アプリを入れる、そんなとこね」
千秋の言葉を聞いて、夏生はスマホを取り出し画面をスワイプすると驚く。
「何これ? こんなアプリ入れた覚えない」
巨漢のスマホから拍手が聞こえる。
「ビンゴだ。ご褒美にどうやったか教えてやる。ケンジだよ、アイツに昨夜ダウンロードさせたんだ」
「どういうつもりなの、アンタの目的はなんなの」
「今から説明してやるよハジメちゃん、時間が無いから手短にな。
目的はナッキーを手に入れるコトだったんだよ、ソイツの能力はチームの資金稼ぎに役に立つからな。
殺害請負サイトに登録させて、闇金の客に殴り込みさせる。本当だと思わせて、今度はケンジに襲わせて、家でも安全でない警察に行こうとするところを拉致する。そういう計画だったんだ。
ところが、計画が狂った。ハジメちゃんにメンバー六人全員やられちゃったんでな。さすがアマゾネス小山だな」
「うるさい」
「ははは、その後ずっとあんた等の会話を盗聴いていた。こちらのルールに合わせて解決しようとしたところで驚いたよ。領事館に逃げ込むなんて思いもしなかった、気に入ったよ。だから諦めることにしたんだがな」
「ならこの状況はどういうこと」
「そこに居るのは鎧武実行チームだ。スマホを持っているヤツがリーダーだよ。この件はもう手を引くつもりなんだが、自分が育てた兵隊をひとりの女に倒されたことが納得できないからケジメをつけたいってきかなくてな。だからラストゲームだ。ハジメちゃんを倒してナッキーを連れてこいと命令した」
巨漢の男、リーダーはハジメを睨みつける。
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