Battle to Goodbye 4

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「一撃……必中……必殺」  そう呟いて息を整える。ハジメの集中力を高めるルーティンだ。 「攻め、か」 千秋が呟く。 「こんのな時になんだけど、安心したいから解説してくれる」  葵と夏生が教えてという顔をするので、あってるとは限らないわよとことわってから、千秋は解説する。 「私とハジメとケイは、小さい頃にハジメのところで空手を、私の婆ちゃんのところで合気道を習ってたの。ケイは途中で辞めちゃったけどね。  でまあ、途中をはぶくけど、私達は空手と合気道を合わせたような武術をやるようになったの。  ケイに言わせると、私が合気道七空手三で、ハジメは空手八合気道二なんだって」 「どおりで。あんた達が高校の頃から強気だったのは、それが自信の源だったからね」 「え、じゃあユカさんもおねーさまと同じくらい強いの」 「スパーリングのパートナーをやれるくらいわね」  それって格闘技チャンピオンと同じくらいという意味では、と夏生は思う。 「後の先という言葉は聞いたことあるかな」 「ゴノセン?」 「相手の攻撃の後から行動に移るんだけど、素早く動くから先に仕掛けるの。だから後の先。私はそれが得意。対してハジメは先の先、相手が反応出来ないくらい速く攻撃をする方が得意なの」 「じゃあ、おねーさまは今からそれをするの」 「たぶんね。けどニイの太極拳は、相手の攻撃力が高ければ高いほどカウンターで返しちゃうからなぁ。まあハジメの性格ならごちゃごちゃ考えずに攻めを選ぶのは当然か」  前屈立ちして中段突きの構えをとるハジメに対して、ニイは指を揃えてひらいた両手を前に出して中腰の姿勢をとる。 「前羽の構え……じゃないな、太極拳の起勢(チーシー)か。なるほど、ハジメの攻めに対して迎撃するつもりか」 「チーシー?」 「太極拳24式の一番最初にやる構え。そんなふうに見えないかもしれないけど、あれで攻防一体の姿勢なの。前からくる攻撃を跳ね上げたり叩き落としたりするの。つまりニイはハジメの先の先を見抜いて迎撃するつもりなんでしょうね」  千秋の解説は当たってるらしい、ハジメとニイは互いにそのつもりになっている感じだった。  呼吸が整ったハジメは覚悟を決める。千秋みたいにフェイントをかけたり多彩な技をくり出すタイプではない。ハジメには性格的に無理なのだ、だから……。 「破ぁ!!」 もの凄い瞬発力で前突きをくり出すハジメ ニイの両腕を避けて胸を狙うが、リーチの差で届く前にニイの両手がハジメの身体に触れる ニイはハジメを両手で抑えつける 「(あら)っ!!」 が、その前にハジメが二段ロケットのようにもう一度踏み込んで加速する 「ぐ、ああぁぁ!!」 ハジメの前突きがニイの胸にヒットし、ニイは吹き飛んで倒れ、そのまま戦闘不能となる。 ハジメはそのまま残心で、リーダーに構えをとる。 「二段突き──いや追い突きか、大した威力だな」 苦虫を噛み潰したような顔をして、リーダーは隊服を脱ぐ。 「やるぞ」
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