ハジメの予感

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 スカイデッキで夏生の乗った便が離陸するのを見送ったあと、四人は帰途につく。  いつまでも名残惜しそうなジェイクを見ながら、ハジメが葵に話しかける。 「ジェイクさん、ずいぶん夏生くんと仲良くなってたわね。飛行機が見えなくなるまで手を振ってたもんね」 「行きの車内でも私が居ないみたいにずっと話しかけてわ、ちょっと複雑な気分よ」  駐車場に着くと、葵は覆面パトカーの方に乗り、ジェイクはとは別行動で帰る。 「良かったの? こっちに乗ってさ」  ハジメが運転しながら後部座席の葵に話しかける。 「早く帰って着替えたいのよ。ハジメもそうでしょ」 「まあね」 「それに夜にはジェイクとまた会うし」 「え? もうそんな約束したの」 「違うわよ。トーマスさんのホームパーティーにお父様と行くってこと。まあ無駄足になりそうだけどね」 葵の言葉に御器所が訊ねる。 「そりゃどういう意味です」 「──ホームパーティーの名を借りたお見合いなのよ、相手は多分ジェイクさんね。でも昨日今日の姿を見る限り、彼の興味は夏生くんに向けられているから、このお見合いはまた御破算になるだろうな」 「また? ということは、もう何度も?」 「ええ。ほら、お父様って上昇志向でしょ、だから将来有望な人とか有益な家の人とか会うとすぐにお見合いさせるのよ」 「ということは、葵先生はまだ結婚する気はないと」 「そうね。仕事の方が楽しいから、まだしたくないなぁ」 「小山はどうなんだ? 結婚したいのか」 「それ、セクハラ行為になりますよ。──そりゃしたいですよ」 「ちなみにどんなのが理想だ」 「……あたしを守ってくれる人」  少し照れながら言うハジメからそれを聞くと、助手席の御器所は後ろにいる葵を見る。ふたりとも、そりゃムリだろ、という顔をした。 ※ ※ ※ ※ ※  葵とともに愛知県警本部に戻ると、葵は父雷蔵に会い御礼と無事の報告をしてから事情聴取を受け、御器所とハジメは特捜に出頭して任務遂行を報告、そのまま報告書作成に入る。  翌日、組対課は予定通り江分利組に令状を持って家宅捜索に入る。違法の相場操作をしたと矢島が自供して逮捕。それを指示したことと夏生へのDV容疑で江分利組長も逮捕された。  指導者と資金源が突然いなくなってしまい、江分利組は活動を制限されることとなり、抗争への発展は未然に防げたことになる。  タクヤは相変わらず逃走中で、半グレチーム鎧武も何人か逮捕されたが、行方は依然としてつかめてない。  ──それからしばらく後、名古屋のとある居酒屋の個室四人部屋に、ハジメ、葵、千秋それにケイが集まっていた。
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