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「正義の味方気取ってんじゃねぇよ、コスプレなら大須でやれや」
「八月になったらね。正義の味方は年中無休だけど」
気を失って倒れている男たちを指差しながら覆面女は挑発する。
「あんた達もこうなりたくなかったら、コイツら連れて帰りな。言っとくけど私は強いわよ、それもかーなーりね」
半グレになるようなヤツ等が素直に聞く筈がない、三人のうち短気そうな男が殴りかかってくる。
覆面女は柳のようにスウェーしてかわすとまわりこんで男の頬に人差し指でちょんとつつく、えっ、と虚を突かれたところに覆面女が膝蹴りをボディにめり込ませた。
「ぐわ」
腹を押さえて動けなくなった仲間をみて、残りの二人が同時に襲いかかる。
覆面女はバックステップで間合いをとると、先に来た男に左のローキックを入れようとしたが、かわされる。が、それはフェイントでくるりとまわりながら体を入れかえると、後から来た男に回し蹴りで踵を後頭部にキメて倒す。
先の男は振り返るといつの間にか倒されている仲間に驚くが、その隙を逃さず覆面女はテコンドーでいうネリチャギ、踵落としを脳天にキメて全員倒してしまった。
「成敗」
決めポーズをしながら決めゼリフを言う覆面女に、ムスッとした顔のハジメがコツコツと近づいて声をかける。
「何してんの千秋」
「ノンノン、クリムゾン騎士・紅のユカよ」
「千秋でしょ」
「紅のユカだってば」
「どう見ても千秋じゃん」
「ユカだってーの」
覆面女が否定しながら指差すところにやっと気づいたハジメは警察無線を切る。それを確認して覆面女こと千秋はスカーフを下げて顔の下半分をだす。
「あーもう、信じられない、こっちは身バレしたら困る立場だから名前も顔も隠してたのに、無線入れたまま名前を連呼するなんて! ホントにもう助け甲斐がないわねぇ」
「いーじゃん別に。だいたい何でココにいるのよ、助けてくれって言った覚えないわよ」
「あたしが言いましたー」
二人の会話に割り込んできたのは、千秋が首掛けストラップの先にある胸に隠していたスマホからだった。
「ケイなの? なんでこんなことを」
「確認目的で近くにいた千秋に張り込んでもらってたのよ。そしたら怪しげなクルマと連中が来たって連絡あったんで、万一対応をお願いしたの」
「シロウトなんだから首突っ込まないでよ」
「はいはい。でもま、もう乗りかかった舟でしょ? 警護対象も二人いるんだし、一緒に行ったら? 千秋となら安心でしょ」
「けどさー」
「あーもう、相変わらず融通がきかないわね。じゃ、こう受け取って。千秋は葵とナッキーに雇われた民間の警備員、領事館護衛までの協力、これでいいでしょ」
ケイにそう言われてもまだ納得していないハジメに、葵からもそうしてと言われてしぶしぶ納得した。
「足引っ張んないでよ千秋」
「こっちのセリフよ。それと名前で呼ぶな、私はユカよ、アマゾネス」
「誰がアマゾネスだ」
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