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私は悔しさと恥ずかしさ、そして恐怖と悲しみが一度に押し寄せて来るのを必死に堪えて、その場を後にしました。
『こっちにおいでよ。僕が、全部教えてあげるよ。君の羽も、足も、顔も、全て僕が……食べて……』
私は、どうかしていたのでしょう。寂しさのあまり、優しい声に引き寄せられたみたいです。私は馬鹿です。愚かです……。
本当は気付いていたのです。もう一つの声が聞こえていました。
カナカナカナカナ……。
「そいつは、偽者だ。こっちに来なさい。あの枝を目指しなさい」
でも、その枝の先には何も無かった。私は寂しさのあまり、進むべき道を誤ったのです。
優しい声に、恋をした。盲目とはこの事でしょうか。出来れば、そのままで……。今でもそんな事を思ってしまいます。
お母さん、初恋というのはこんなに悲しい物なのでしょうか。
カナカナカナカナ……。
『迷わず進みなさい。あの枝の先に行けば、全てがわかります』
私を導くもう一つの声。あの暗い枝に、何があるのでしょう。
行かないといけないのでしょうか。暗い、怖い。そして……体が疼きます。私は……。
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