キミが守る魔術

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 公園にしては何も無い広場の様であった。ベンチとジャングルジムがあるだけの空間は、向こう側にある駐車場が見えるほど開けた土地になっている。 「あ!あそこに居た。でも何か変じゃない?」  多分がベンチに蹲る様に座っていた。地面を見ているのか項垂れた姿は哀愁漂うサラリーマンと言うよりは、絶望に打ちひしがれる事業失敗者の様でも有った。  すぐに捕まえに行こうとしたキミを押さえつけた姫香は、少し様子を見てからにしようと言い。隠れたまま多分の様子を窺っていると、そこに愛村がやって来た。 「何?どうなってるんですか。何で多分さん逃げないんですか」 「良く見ろあの眼。どう見ても意識がある様には思えない」  顔を上げた多分は、虚ろな顔のまま愛村を抱き寄せた。キミにはどう言う状態か全く分からなかったが、姫香とジョーは神妙な面持ちの中その光景を眺めキミに話しかけてきた。 「鳥越。お前はちょっと来ない方が良いかも知れない、あの非常食を連れてこのまま応援を呼んでくれないか」
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