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星の降った夜
今夜、あたしは星を手に入れる。
やっとだ。やっとこの時が来た。嬉しくてどうにかなってしまいそう。鼻歌だって歌っちゃう。
少しだけ音程がズレているけど気にしない気にしない。
上機嫌なあたしを見て、父さんと母さんが微笑みながら話をしている。
「もう朱亞も”星”を授かる年になったのかぁ。俺もおっさんになる訳だ。」
「朱亞、どんな星でもきちんと向き合うのよ。それが、あなたへの天からの祝福なんだからね。」
「そうだぞ。たとえ蛇でも蛙でも、それがお前の星なんだからな。」
「わかってるわ。父さん、母さん。あたしがどれだけ未だ見ぬ星を、大事に思っているか見せたいくらいよ。」
そう、星を授かるのをあたしがどれだけ待ち望んでいたことか!
この村では、十八の誕生日の夜、天からの祝福が与えられる。それが”星”だ。
”星”は、天から地上に落ちてくる時に、様々な姿に変わる。
父さんの星は小さな蜥蜴だし、母さんの星は綺麗な手鏡だ。
星の形は人それぞれ。自分の星は何になるのかは誰にもわからない。
でも、”星”には絶対の共通点がある。
それは、宝玉がついていること。そして、その宝玉には”星の加護”が込められていること。
父さんの蜥蜴の瞳には、空色の星が埋まっていて、母さんの手鏡は、持ち手に菫色の星が嵌められている。
”星の加護”は、危険な時に、自分を守ってくれるのだというけれけど、それを発動した人はあんまりいないという。もはや伝説のようなものだと言ってもいい。
でも、星の加護なんて、別にどうでもいい!
だって、あたしはやっと星を手に入れられるんだから。どんな星だって全力で愛するの。
「あぁ、あたしの星はどんなのかしら。父さんみたいに動物?母さんみたいに小物?それともお隣のおばさんみたいにお人形さんかしら。」
うっとりと星に思いを馳せるあたしを、くすくす笑いながら父さんと母さんが見ている。
いつものあたしだったら、子供扱いするなとむくれていたけれど、今日はトクベツ。
あぁ、はやく夜になればいいのに。
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