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「叫んだって無駄ですよ、どうせ誰も来やしません」
「くっ…嫌っ!……お、碧~~~っ!!!」
主人の切実な叫びが屋敷に響いた。
「ここです!織姫様。ボクです…!」
両手で主人の頬を包む。涙に濡れ、少し紅潮した肌はまだ俺のせいで震えていたから、壊れないように優しく触れたつもりだった。
「……」
「……」
もう一度目が合った。今度はもう少し近くで。俺の瞳が主人に映り込むように…。
「地球の海みたいな…深くてキレイな色…」
「また、言ってくれましたね…」
「本当に…碧?」
「はい、織姫様」
俺は出来るだけ爽やかに微笑んだ。微笑んだのだけど、それは反って主人を驚かせたようで、次の瞬間、俺はベッドの下へと突き飛ばされていた。叫びながら逃げていく主人の声を聞きながら、当然の報いだとその痛みを受け入れた。
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