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「いつまでソファの陰に隠れてるんですか。いい加減出てきてください」
「今日は織姫様の大好きな辛味噌肉まんを蒸しましたよ」
「うう…」
隠れているつもりだろう主人の身体がピクリと反応したのも、今の視界からは丸見えだ。
「いやーこの身体になったら、何でも作れちゃいそうだなぁ…。青椒肉絲に回鍋肉、肉団子の酢豚風。あんかけ焼きそば、焼き餃子。あ、デザートに杏仁豆腐用意してますからね!」
「全部私の好きなもの~~…!!」
主人は半べそになりながら叫んでいる。
「肉まんは蒸したてが一番!っていつも言ってませんでした?」
「……ほんとに…本当に、碧なのね…?」
「だから、さっきから何度も言ってるじゃないですか」
「だって…そんな、猫が人になるだなんて魔法みたいな…」
「魔力なら前から見てるじゃないですか、ほら」
俺はそう言うと、ホカホカに湯気が立った肉まんをふわふわと浮かせ、主人の頭上で踊らせる。
「……その力は健在なのね」
主人は頭上に浮かぶ肉まんを目で追いかけながら、遠慮がちに呟く。
「はい。でも、それだけじゃありません…よっ!」
「ひゃあっ!?」
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