第一章

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 「いつまでソファの陰に隠れてるんですか。いい加減出てきてください」  「今日は織姫様の大好きな辛味噌肉まんを蒸しましたよ」  「うう…」  隠れているつもりだろう主人の身体がピクリと反応したのも、今の視界からは丸見えだ。  「いやーこの身体になったら、何でも作れちゃいそうだなぁ…。青椒肉絲に回鍋肉、肉団子の酢豚風。あんかけ焼きそば、焼き餃子。あ、デザートに杏仁豆腐用意してますからね!」  「全部私の好きなもの~~…!!」  主人は半べそになりながら叫んでいる。  「肉まんは蒸したてが一番!っていつも言ってませんでした?」  「……ほんとに…本当に、碧なのね…?」  「だから、さっきから何度も言ってるじゃないですか」  「だって…そんな、猫が人になるだなんて魔法みたいな…」  「魔力なら前から見てるじゃないですか、ほら」  俺はそう言うと、ホカホカに湯気が立った肉まんをふわふわと浮かせ、主人の頭上で踊らせる。  「……その力は健在なのね」  主人は頭上に浮かぶ肉まんを目で追いかけながら、遠慮がちに呟く。  「はい。でも、それだけじゃありません…よっ!」  「ひゃあっ!?」
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