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「じゃ、七夕までにキレイに治すことですね!さ、今日も仕事が5件入ってますよ」
一方のボクは、主人の様子に何だかムカついて、ペロリと彼女の口元を舐めサッとテーブルを降りた。猫のボクには随分と濃い味がした。
「い、依頼分…終わったよぉ~…」
よろよろと3日ぶりに仕事場から出てきた主人の手には、眩いばかりの織物が抱えられていた。昔から機織りの名手として名高かった主人だが、その技術は何年経っても衰えを知らず、むしろ進化し続けていた。光の加減で何色にも煌めく織物やとろけるほど肌触りの良い泡のような布地。天界では『ORIHIME』ブランドとして名高いほどの人気だ。
「お疲れ様でした。じゃ、これは流れ星便で送っておきますんで」
「ん、よろしくー…」
「あ、ソファで寝たら風邪引きますって!」
「分かった分かった……」
そう言いながら、ソファにパタリと横になった主人の寝顔は、全く化粧っ気もなく髪もぼさぼさだったけれど、仕事人としての凛々しさがくっきりと残っていた。
「猫じゃ流石に運べないや」
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