第一章

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 ぐっと後ろ足に力を入れて立ち上がると、急に視界が開けた。いや、むしろ視界が高い。無意識に飛んでしまったのか? 慌てて下を見ると、見慣れない天人のような足が二本、地面に見える。  「え……ええ~…!?」  こっそり屋敷に戻ると、主人はぐっすりとソファで寝ていた。それを確認してから、ボクは主人の寝室へと向かった。寝室のウォークインクローゼットを開けると、ズラリと並んだ男物の服。主人が彦星様へと作った品々だ。  「彦星様には悪いけど、お借りします!」  パン!と一つ両手を合わせてから、服を一着取り出した。何せ急に猫から人に変わったのだから、真っ裸だったのだ。  「さすが織姫様…。着心地が格別だ…」  言いながら袖を通すと、何故かチリッと胸が痛んだ。  「さて、これからどうするか…」  と、クローゼットの鏡と目が合う。 いや、正確には天人姿の自分と目が合った。  おやおや。これは…。  クセのある黒い長めの髪。  褐色肌の健康的な肉体。  織姫様がキレイな色ねと言ってくれたブルーアイはそのままに。  よく見ると袖の裾が短いから、彦星様より背丈があるらしい。  「俺、めっちゃイケメンだな?」
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