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「そろそろ起きてください、織姫様」
「んー…もうちょっとー…」
相変わらず寝起きの悪い主人はむにゃむにゃと夢の中にいる。
昨晩、あれからソファで寝ていた主人を寝室のベッドまで運んだ。
腕に掛かる無防備な重み、手から伝わる人の温もり。
猫の姿では決して感じられなかった感触。
主人を俺は初めて抱きかかえた。
ベッドに下ろした瞬間、ふわりと甘く香ったのは、シーツからだったのか、それとも…。
シーツの上に広がる長い髪の流れをじっと見る。うねる度艶やかにきらめいて、まるでそれは天の川のようだった。
昨日はとても触れられもしなかったけれど…。
俺はそっと指でそれをすくう。更々と指の隙間から流れてしまうのが堪らなくて、ギュッと力を籠める。
ああ、これが人の欲望というものなのか。身体の奥から湧き出る熱い何かが一気に全身を駆け巡っている。
「ふがっ…!んー…?」
主人の髪に口づけをした瞬間、パチッと当の本人と目が合った。
「やっと起きましたか?織姫様。おはようございます」
それはそれはスマートに微笑み、髪の毛に口づけたことは無かったかのように振る舞う。
「嘘……バ、ハル…?」
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