1人が本棚に入れています
本棚に追加
「え…」
「バハル~~!!!生きてたのね~!!」
「え、えええー!?」
主人は何の躊躇もなく俺に抱きついてきた。そして必死に離さんと腰にしがみついている。
「もう~…心配したんだから…!あの事件の後、行方知れずでぇ~…」
マズイ、本気で泣き始めた。全くどんなゲームだよ!完全に夢だと思ってるぞ、この人は…。
俺はそっと主人の後ろに手をまわし、その華奢な背中を包む。
「…織姫様、よく聞いてください。これは夢ではありません」
「へっ?」
弾かれた様に、顔を上げた主人の瞳にやっと俺が映る。
「そして俺は、バハルじゃありません」
「……」
さっきの勢いはどこへやら。主人は借りてきた猫のように、俺の中でピシャっと硬くなっている。
「彦星様というお方がいながら、他の男に抱きつくとは織姫様も随分大胆ですね」
「え…と、それは…その…」
「彦星様がこんなところを万が一見たら、どう思いますかね?」
「……!いや……離して…」
主人の身体が小刻みに震えているのが嫌でも分かった。伏せられた瞳でもさっきとは違う涙が溢れてきているのが分かる。
さすがに俺も限界だ。
最初のコメントを投稿しよう!