第一章

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 「え…」  「バハル~~!!!生きてたのね~!!」  「え、えええー!?」  主人は何の躊躇もなく俺に抱きついてきた。そして必死に離さんと腰にしがみついている。  「もう~…心配したんだから…!あの事件の後、行方知れずでぇ~…」  マズイ、本気で泣き始めた。全くどんなゲームだよ!完全に夢だと思ってるぞ、この人は…。  俺はそっと主人の後ろに手をまわし、その華奢な背中を包む。  「…織姫様、よく聞いてください。これは夢ではありません」  「へっ?」  弾かれた様に、顔を上げた主人の瞳にやっと俺が映る。  「そして俺は、バハルじゃありません」  「……」  さっきの勢いはどこへやら。主人は借りてきた猫のように、俺の中でピシャっと硬くなっている。  「彦星様というお方がいながら、他の男に抱きつくとは織姫様も随分大胆ですね」  「え…と、それは…その…」  「彦星様がこんなところを万が一見たら、どう思いますかね?」  「……!いや……離して…」  主人の身体が小刻みに震えているのが嫌でも分かった。伏せられた瞳でもさっきとは違う涙が溢れてきているのが分かる。  さすがに俺も限界だ。
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