【3・濡衣】

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それは、ある時の事…。 いつもの様に、父が会社で帳簿の入出金の流れをチェックしていたら… 何と! 偶然、ある人物の不正を見付けてしまうのである! その人物とは… あろう事か、父の直属の上司で溝口という経理部長だった。 溝口は、経理部長という肩書を持っている以上、経理の事は何から何まで熟知しているはず。 だから帳簿上には一見、不正の痕跡など全く分からない様に上手く巧妙に『細工』を施したのだろうが… やはり長年、経理畑に従事していた父のプロの目が、その溝口の不正を見抜いてしまったのである。 父は…悩みに悩んだ。 本来なら、この事を会社の上層部に当然、報告するべきだ…。 しかし、溝口部長は父が新入社員の頃から経理のノウハウを手取り足取り教えてくれた…言わば『恩人』でもあったのだ。 父は、悩みに悩んだ挙げ句… 会社には報告せずに、仕事帰り…二人きりの酒の席で愚直にも溝口部長本人に、もうこれ以上の不正を止めるよう進言した。 そして、その結果…。 当の溝口は… あろう事か!父が見付けた帳簿上の自分の不正の証拠を秘かに全て削除、隠蔽して… その代わりに! 父こそが不正の真犯人であるという『ニセの証拠』をでっち上げ、捏造し… 更に! 会社の上層部に父の不正として告発したのである! そして、それが元で… 何と! 父は職場を追われ、 失業する破目になってしまったのだ!
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