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グリーングリーン
「ほっほっほっ。さあ、何かみんなで歌いたい歌はあるかな? 何でも弾いてあげるよ」
アコーディオンで陽気な音楽を奏でながら、おじいさんがみんなに訊いた。
「わぁ~ほんとですか? じゃあわたしは、グリーングリーンが歌いたいです!」
とっても嬉しそうに、お花さんがそう言った。
お花さん、グリーングリーンは何だか物悲しすぎるよ。
もっと他の歌がいいんじゃないかな?
そういう僕の声はヨシオくんには届かなくて、
「おや? 奇遇ですね! ぼくたちの合唱の課題曲もまたグリーングリーンなのです! それではみんなで歌いましょう!」
そう言って、おじいさんのアコーディオンの伴奏に合わせてみんなでグリーングリーンを歌い始めた。
小さな公園にグリーングリーンの爽やかなメロディーとみんなの元気な歌声が響き渡る。
実際みんなで歌ってみると、グリーングリーンはとっても楽しかった。
ニコニコ楽しく歌っていたが、2番以降はみんなだんだん歌詞があやふやになってくる。
すると7番までの全ての歌詞を暗記してきたヨシオくんが、音頭を取って次の歌詞をみんなに教えてくれるようになった。
さすがはヨシオくん、出来る男だ。
鼻水をたらした横顔が凛々しい。ヨシオくんがモテる理由が分かった気がした。
こうしてみんなで楽しく歌っていると、今まで小さなことにこだわっていた自分がバカみたいに思えてきた。
あの小さなブランコがメリーゴーランドでもいいじゃないか、だって楽しいんだもの。
僕の子犬はやっぱりお花さんのみぃたんでは無いけれど、愛してくれている、それだけで十分じゃないか。
青い空では小鳥も歌い、風が吹き、緑がゆれる。
春の暖かな日差しを浴びながら、僕たちはまるで楽しい夢のように元気に明るく、その歌を歌い続けたんだ。
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