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 父は県庁の職員だった。  地元の農業高校から東京の大学に推薦してもらえるところだったのに、親に「何、甘いこと言うてる」と一蹴され、公務員試験を受けることになったらしい。 その勉強をしている時も「家の手伝いせなあかん時に何してるんや」と農作業させられた話は、何度も聞いた。  父は私に、公務員になることを強要した。  結果、私は期待に応えることはできなかった。公務員試験の結果が出る頃には、一般企業の募集は終わっていた。  私は学校から、ビジネス系の専門学校をどうかと勧められた。  修学旅行へ行く保護者承諾書でさえも、下のランクのクラスに落ちた者は行かなくていいと、なかなかくれなかったのだ。試験を落ちた私が、余分に学校など行かせてもらえるわけがないと思い込んだ。  担任の先生は、親身になってくれた。 「修学旅行の時みたいに、お父さんに先生が言ってもいいんやぞ」  気持ちはそちらに傾いたが、それは断った。  恐る恐るパンフレットを出し、しどろもどろに頼んでみると、あっさり承諾を得た。  父は、行き場の無くなった私を就職させようと、親戚に頼みに行ったらしい。 その会社は、当時では先端を行く、コンピュータ関連だった。しかし、そこで言われたのだ。 「商業科を出てるんやったら、英文タイプライターの資格でも持ってるで、良かったんやけどの」  そういう経緯があり、私は専門学校に進んだ。  
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