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特別な日
『これは、ある夏の出来事だった。』
今日は日曜日。
「百合、おはよう!朝だぞ~!」
お父さんが下から呼んでいるのが聞こえる。そう。私の名前は『百合』。百合の花と同じ名前。私のお母さんがその名前を付けたらしいけど、お母さんは私を産んで死んでしまった。
「百合~!今日の当番はだれだっけ?」
…あ!「今行くからちょっと待ってて!」
小学生の時から、お父さんと二人で家事を当番制にしていた。それで今日のご飯担当は私だった。
名前の由来をお父さんに聞きたいけど、お母さんの事を思い出して悲しむお父さんの姿は見たくなかったから、高校生になった今でも自分の名前の由来を知らなかった。
「ご飯を食べたら用意しておけよ~」
「はーい」…今日は私の誕生日であり、お母さんの命日でもある。毎年この日はお墓参りをして、誕生日プレゼントとケーキを買いに行くことになっている。だから、心の底から祝ってくれるのは何も知らない友達だけだった…。
いつものように車に乗って出かけてまずお母さんのお墓の前で手を合わせる。(今年も温かく見守って下さい。)
そしてまた車に乗り込み、ショッピングモールへと向かう…はずだけど、お父さんは反対の方向へ向かって車を走らせた。驚く私をよそに、お父さんは車を走らせたまま、何も話さなかった。
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