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ジュリアン坊やの「居所」は四百年来変わっていない。
グランプラスの目と鼻の先である。
グランプラスは「大広場」の意味を持ち、ブリュッセルの中心地にあって世界遺産に登録されている。フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーがヨーロッパで一番美しい広場と絶賛したことでも知られており、一四〇〇年代に建造された市庁舎を中心に、中世の歴史的建造物に囲まれている。
現在は市立博物館や、チョコレートを国の名産とするこの国の代表的なチョコレートショップ、レストランなどに衣替えして広場を囲んで軒を並べている。
今年のバレンタインデーの時だった。
この国では男性が女性にプレゼントするのが一般的である。
たまたま懐のさびしかったジュリアン坊やは、グランプラスに店を開いている幾つかの有名なチョコレートショップから、最上級のトリュフチョコを十ケースも盗んできて、メリーにプレゼントしたのである。
女性にプレゼントするのは初めてのことだった。
その手段が頂けないが、グランプラスを四百年間我が家の庭先のように思っているジュリアンにとっては、そこでモノを売っているショップは、自分の店の様な感覚で善悪に鈍くなってしまっている。
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