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メリーは決して美人ではなく、少しばかり頬のふくらんだおしゃまな顔つきが憎めない。
ジュリアンの目鼻の整った顔立ちは、幼さの中に愛らしさと品格がある。
同じことをしていても、単に、男の子と女の子の違い以上に人々の感じ方は違うようである。新参のメリーとしては、我が物顔でグランプラスを歩きまわる小生意気な坊やは、一度は誘惑して鼻をあかせてみたい対象であり、その野心だけは隠そうとしなかった。
メリーが二十四時間、その場所から離れられないのに対して、ジュリアンは身代わりを置いて勝手に遊び回っている。メリーにとっては少しイラついた存在であったが、彼が現れた時には愛想よく媚びた眼差しを送るのを忘れなかった。
ジュリアンはその手に乘ってしまったのか、こともあろうに、王室ご用達の高級チョコレートショップから、王さま、王妃さまお好みのトリュフチョコを盗んだのである。
これが、メリーの自尊心を満足させたのは間違いなかった。贈り主の気持ちに精一杯応えようと、グランプラスを横切って尋ねて来たジュリアンを引き留めて一晩明かすことになったのである。
トリュフチョコは良くも悪くもジュリアンとメリーにとっては縁結びの神ということになる。
トリュフは、フランス料理の高給食材として知られているキノコの一種なのだが一般のキノコと形がまったく異なる。丸みを帯びて小さな黒いジャガイモの様な形をしている。トリュフチョコレートは、この高級食材のトリュフに形が似ているところから、この名がついたそうだ。
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