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ジュリアンのもうひとつの気がかりは、新しく任命された首相のことであった。
この国の首相は、功成り名遂げた、老いぼれジジイが名目だけで務める楽ちんな職業といわれて久しい。ところが、今度の新首相は、若い改革派のエリートで、国は違うが、ジョン・エフ・ケネディの再来とまで言われているのだ。ジュリアンとメリーが起こした“トラブル”が世間に漏れた場合、どんな騒動になるか、想像しただけで背筋が寒くなる。
加えるに、首相にはメリーについて、ちょっとした風聞があった。
首相がまだ観光大臣の職にあった頃、(観光立国でもあるこの国の観光大臣は重い職のひとつである)予算の一部をつかい、常に人目にさらされ、その割に人気の出ないメリーを気づかって、高価なパジャマを贈ったことがあるのだ。
新聞種になり、記者にどうしてセーターやカーディガンでなくパジャマだと問われて、「彼女にも夜の生活があるだろう」と答えて、所管の大臣として品が無いと賛否両論を巻き起こしたことがあった。
そんなやりとりがあっただけに、目にかけていた少女のお腹が大きくなったとあっては、ことがことだけに、首相はあたまを抱えるに違いないのだ。
辞めることはないだろうがこの国では予想しないことがなんでも起こり得る。
その前になんとか処理しなければ・・・。
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