トゥインクル・アゲイン

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 僕等が中等部に上がった頃。この国に、暗雲が立ち込めるようになったんだ。  君も歴史の授業で勉強したんじゃないかい?そう、僕等の国が他の国との戦争の準備を始めてしまったんだ。  戦争っていうのは、人と人が殺し合う恐ろしいものだけれど……まだ準備をしているうちから、怖いことはたくさん始まっていたんだよね。  そう、環境汚染だ。  恐ろしい兵器をどんどん工場で作るために、国は環境を綺麗に保つことを放棄するようになってしまったのさ。とにかく、一刻も早く、他の国よりたくさん怖い兵器を作らないといけない。あの当時、一番人をたくさん殺されるとされていた兵器が“魔法弾”による遠距離射撃だった。魔法の弾を魔法使い達がたくさん錬成し、その威力に耐えられる魔法の砲台や銃を大量に作らないといけない。魔法使いの人達は、毎日毎日酷い環境でたくさん働かされ、多くの人達がどんどん倒れていった。魔法の筒を作る兵器を磨いた汚い水はみんな川に流されいき、工場からは汚れた煙がどんどん排出されるようになっていったんだよね。  結果、この国の空も水も、どんどん汚れていってしまったんだ。  ルーイが唯一降りてくることのできる湖は、他の川と繋がっている。よそから流れ込んでくる水が汚れていれば、あの湖の水もどんどん汚染されていってしまうんだ。  何より、大気が汚れて、スモッグが空気中を満たすようになると。空が晴れているのに、星なんか全然見られなくなっちゃうんだよ。  ルーイと会える日は、どんどん減っていってしまった。ある時ルーイが悲しそうに、僕達にお別れを告げに来たんだ。 『ごめんなさい。僕のお父さんやお母さんが、もう地上に降りてはいけないと言ってるんだ。地上はとっても汚れてしまったから、このまま降り続けたら僕の身体も汚れてしまうからダメだって。何より、このままだとこの国から星は見えなくなってしまう。星が見えない夜は、僕はこの国にやってくることができないんだ。……きっともう、君達と会うことはできないと思う……』  何年も、何年も、何年も。ずっと六人で続いていた友情が、こんなところで終わってしまうなんて。こんな馬鹿な話があっていいだろうか。いいや、いいわけがない。  ルーイは何も悪くないのに、どうしてルーイが謝らなければいけないんだろう。  何故、僕達はただ一緒に会って、おしゃべりをして、ささやかなお願い事を言うだけで十分なのに。それが大人達の都合で奪われないといけないなんてことになるんだろう。  だから、僕は言ったんだ。 『ルーイ!僕達、まだ魔法使いの見習いだけど……卒業して立派な魔法使いになったら、水や空気を汚さない方法を考えるよ。工場が、そんな風に汚さないように、戦争なんかなくなるやり方を考える!そして、また綺麗な空と水を取り戻してみせるよ。だから……まだ会える時まで、待っていてくれないかい!』
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加