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※※
家族葬なのに、優里さんは私を参列させてくれた。
「見送ってあげて」
いつものように微笑んではくれなかったが、優里さんは気丈にも喪主を務めた。
「これからは、私がしっかりしないといけないから」
優里さんは、一生分の辛い思いをしたんじゃないのか。なのに。どうして。これだけ身も心も削った人に、神様は更なる仕打ちを与えるのだろう。
『俺は産まれてくる子には会えないからさぁ』
違う、それはこんな結果を願った訳じゃないのに。
優里さんが救急搬送されたのは、一穂さんを見送ってから一週間程経った頃。直接的な原因は分からないが、精神的な負荷に加えて身体も大分無理をしていたのが関係ないとは言えなかった。
後期流産。
私が顔を見れた時に、優里さんは何も語らなかった。ただ、私の名前を呼び、この体を抱き締めた。奏、かなでと何度も呼ばれた名前。
私はその一つ一つに返事をする。
「奏はいなくならないで」
小さく、消え入りそうな声に、私は涙を流しながら。何度も何度も頷く事しか出来なかった。
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