再教育

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再教育

 この国で、流れ星が見える機会が増えている。  しかも流れ始めてから消えるまでが遅いので、お願い事もしやすくなったといっていい。流れ星にお願いすると本当に叶うらしい、という噂が誠しなやかに流れているので、私も是非お願いしてみようとある晴れた夜に試してみることにしたのだ。  空に輝くキラキラ星の大群。  自分が通っている中学校にこっそり忍び込み、屋上へ。此処がこの街で一番綺麗に星が見えるのだ。星が近い場所、流れ星がよく見える場所の方がきっとお願い事も叶いやすいことだろう。 「よーし!」  私は流れ星が輝くいやいなや、お祈りポーズをしてお願い事をした。 「どうかマキコがウツになりますよーに!学校来なくなって、イラスト描く気もなくなって、二度とあいつの顔と作品を見なくて済むようになりますように!!」  同じクラスの、藤木真輝子(ふじきまきこ)。ちょっとイラストが得意だからってみんなにちやほやされる、忌々しい女だ。しかも、この間高校生のイラストコンテストで金賞を取ったとかで、余計みんなにもてはやされていい気になっている。ブスで人付き合いも悪いくせに、全くもって気に食わない。  そもそもあいつの絵のどこが評価されるのかさっぱりなのだ。あんなのよりもっと上手い奴なんかいくらでもいる。女キャラはお色気ムンムンで男に媚びた顔をしているし、男はきもいイケメン気取りばかり。あんな気持ち悪い絵柄が、ちょっと審査員の好みに引っかかったからって、どうして上手いだの凄いだのなんてことになるのだろう。  私のもっと上手い絵は、さっぱりコンテストで通らないのに。  リアルでも私の方が絶対美人だし、友達だって多いし、人間としてまともなはずなのに! ――もしかしたら、審査員に賄賂でも送ったのかも!そうでもしなきゃあんなの選ばれる筈ないし……やっぱり、さっさとあんな奴はいなくなった方がみんなのためなのよ!  だからさっさと、あの女を潰して。  私が再度お願いした、まさにその時だ。 「え?」  星が――降ってくるのだ。それも、私目掛けて。 「う、うそ、うそ、うそ!?」  慌てて屋上のフェンスから離れ、逃げようとするも間に合わない。  あっという間に私の視界は真っ白な流れ星の“光”に包まれ、何も見えなくなったのだ。
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