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10.真実
「それどういうこと? なんで病院の住所がわからんかったらクソ親父に会われへんの? あいつどっか悪いの? なあ、なんでなん?」
バレてしまったらしょうがない。どうせ東京に着いたら話すつもりだったんだし。
私は矢継ぎ早に訊いてくる祐樹に本当のことを話すことにした。
「実はな、お父さん入院してんねん。先長くないらしいわ」
「それ、どういうこと?」
私を見る祐樹の瞳が揺れていた。いきなりこんなことを言われたら動揺するのも当然だ。私だって初めて知ったとき頭の中が真っ白になった。
「お父さん、昔っからお酒ばっかり飲んでたやん。暴れて、結局お母さんと離婚したけど。別れてからもお酒、やめられへんかったみたい。それで肝臓がやられて、病院に行ったときにはもう手遅れやってんて……」
「えっ? あのクソ親父が……?」
祐樹の手のひらがペットボトルをくしゃと握りしめた。
「……それで、最後に一目だけ会いたいって連絡来てん」
「……今さらかよ」
「えっ?」
「病気になったからって、今さら、なに甘えたこと言っとんねん」
祐樹の瞳から動揺が消え、怒り色に染まった。
「あいつは、酒に溺れて暴れた挙句、外に女作って逃げたんやぞ。それを今さら、死にそうなんで会いたいですって。ふざけんな!」
「でも、このチャンスを逃したら一生お父さんに会われへんようになってしまうねんで?」
「だから? オレに父親なんておらん」
「そう言わんと、お願い。どんな悪人でも私らの父親やん。恨み言でもなんでもいい、最後にお別れいいに行こう」
不意に頬に熱いものが伝った。私を見る祐樹の瞳に再び動揺がもどった。
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