11.富士山

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11.富士山

「姉ちゃん……。わかったから泣くなや」  手の甲で頬を触れてみるとそれは紛れもなく私の涙だった。  指摘されて初めて自分が泣いていることに気づいた。 「一緒に行ってくれるの?」  私の問いに、祐樹はぎこちなくうなずいた。 「オレはあいつと違ってスジは通す。一回約束したことは絶対守る。だからもう泣かんといて」 「……うん。急に涙が出てきてん。なんかごめんな」 「それとこれ……」  祐樹は自分のリュックから私のスマホを出した。 「あっ! 私のスマホ! なんで祐樹が持ってるん⁉︎」 「さっきマクドで忘れてたで。いつになったら気づくか試しててん。予想外の結果になったけど」 「うぉー。さすが私の弟! ありがとう!」  抱きしめようとする私を祐樹はうざったそうに避けた。  ちょうどそのとき、島田駅へ到着することを知らせるアナウンスが流れた。 「姉ちゃん、行くで!」  島田駅で電車を乗り換え熱海まで向かった。途中に見えた富士山は凄かった。車内からだけど、スマホでたくさん写真を撮った。私が撮った写真は建物で富士山が見切れてたり、窓ガラスの反射が写り込んだりイマイチな出来栄えだったけど、祐樹は綺麗に富士山を捉えた写真を撮っていた。病院に着いたら、お父さんに見せてあげよう。  熱海駅に着くと、今度はJR東日本の電車に乗り換えた。上野東京ラインとかいう電車だ。これに乗れば、あとは東京まで乗り換えなしだ。ホームに電車が入ってきたときはギャップに驚いた。今まで三両や四両といった短い編成ばかりだったところに十五両の長編成だ。さすがは東京、電車も長い!  ドア横の二人がけの座席に座り、東京を目指した。
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