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2.朝ご飯
私は祐樹を無理矢理隣に座らせた。それから手にしていたコンビニのレジ袋からおにぎりを取り出して祐樹に渡した。
「あんた、朝ごはん食べてないやろ? だからそんなイライラしてんねんで。これお姉ちゃんの奢りやから食べ」
祐樹は嫌がっていたがそれでもお腹が空いていたようで渋々、おにぎりの包装を開け始めた。
その間にドアが閉まって、電車はゆっくりと動き出した。私の勝ちだ。
「よりによって梅かよ。明太子とかマグロとかもっといいのあるやろ」
ひと口齧ると、祐樹は不満を口にした。
「なに言うてんの! おにぎりって言うたら梅やろ」
「もうええわ。お茶ある?」
私はレジ袋からペットボトルのお茶を出して祐樹に渡した。
「ほい、これ」
「ありがとう」
祐樹はお茶を一口飲むとふぅと息を吐いた。
「それで? なんでクソ親父に会いに行くの」
「あっ! 一緒に行ってくれる気になった?」
「違うわ。でも電車も発車してもうたし、次の駅までの間、理由ぐらいやったら聞いてもいいかなと思って」
流れる車窓を見ながら、祐樹は不貞腐れて言った。おにぎりぐらいで機嫌をなおすとは祐樹もまだまだ子供だ。私は心の中でほくそ笑んだ。
「お父さんが出て行って二年も経つやろ? 久しぶりに成長を見せてあげようと思ってん」
「はぁ? なんでそんなことするん? 姉ちゃん忘れたんか、あいつがオレら家族にしたこと」
「忘れてへんよ。でもたまにはいいやろ? なにがどうなってもあの人が私たちの父親ってことには変わらへんねんから」
「そんなん知らん! オレはあいつを許してへんからな」
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