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星降祭には今年も家にいよう。
星を一個も拾うこともなく。
例え拾ったとしても、私は空へと投げつけるのだ。
私は出店の連なる坂道から遠ざかるように、裏道を通り。沈む気持ちで帰宅しようとした。浮かない気持ちで歩いていると、誰かに呼び止められ後ろを振り向く。
「ねえ、君は星降祭には参加しないんだね。なんでか悲しい出来事があったんだろうけど、せっかくの星降祭なんだ祝えるときに祝わないと」
真面目そうな青年だった。
ここは裏道で、光源は間隔を置いた電灯の明かりのみ。
こんなところに星なんて。
ところが、青年は両手一杯にキラキラと光る星を持っていた。
「私、帰るわ!」
私は猛ダッシュして家路についた。
「待って!!」
後ろからさっきの青年からの悲痛な声が聞こえた。
家に帰ると、うちの両親も星降祭には参加せず。テレビを観ていた。二人とも何も言わないが、あの日から気持ちは私と同じなのだろう。
私は二階へと上がると、ふと、窓の外を覗いた。
「君に全部あげるよ! なんだか凄く辛そうだから!」
さっきの青年はそう叫び。はにかみんで両手一杯の星を玄関先に置き。手を振って、そのまま帰ってしまった。
私は呆れて、物も言えない。
明日には星降祭は終わるから、その時に空に向かって全て星を投げ返そうと思った。
その日は、色々な憤りを交えた感情で頭が一杯だったけど、不思議とぐっすりと眠れた。
朝の7時に目覚まし時計はセットされていた。
けたたましいアラームの音で起き出すと、私は隣を見て驚いた。
隣のベットに姉が眠っていたのだ。
何年も空いたままのベッド。
姉が死んだ日には、そのベッドの中で一日中。
「姉さん! お願い! 帰って来て!」
と泣きながら叫んでいた日を思い出す。
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