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昭和四十五年、八月三十日。
来る物は拒まずと云うのどかな村は、数千人の集落だ。近場にあるのは、自販機や小さいな売店。しかも近場と言っても、徒歩で一キロ先に存在する。
だから村の人々は、自分達の土地を持ち、そこで田んぼや畑を作っていた。自給自足の生活をしつつ、日用品などは隣の街まで出掛ける。
見渡す限り、田んぼか畑。それと山を囲うように一軒家がちらほら建てられていた。
そんな田舎の集落で生まれ育った仲田 歩。人口が数千人の中で子供がいるのは数十人だ。
ほぼ成人を超えた大人達で、特に高齢者が多い。村を愛する若者は土地に残り、都会に憧れを持つ若者は村から去ってしまう。
もう何十年前に建てたのだろう、と思うくらいのボロついた場所。そこは子供達が通う学校だ。もちろん歩もその一人で一面、田んぼに囲まれた道筋を歩きながら学校へと向かう。
長い一本道を歩いた先には学校がある。学校に到着すると校門の前で、ランドセルを背負う今泉 敏が立っていた。
「あ、歩〜!」
小石を蹴っていた敏がこちらに気付いたみたいで大きく手を振ってきた。
「敏、おはよう」
「はよう」
敏の前まで小走りで向かい、お互いに軽く挨拶を交わした。たわいのない話を敏と駄べりながら、教室へと入る。
教室の中には、小学一年から中学三年の子供達が居た。性別や年齢も様々だけれども、どの教室もバラつきのあるクラスばかりだ。
年齢の近さによって割り振られているけれど生徒数の少なさであまり変わらない。
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