プロローグ

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 キンコンカンコン。  チャイムの音が鳴り、急いで歩達は自分の机にランドセルを乗せる。敏とは隣同士で、この村では珍しく年齢までもが同じだった。 「今から勉強する為に、机を繋げてね〜」  女の先生が教室に入り、軽やかな声で勉強をするように指示を出す。  子供達は、言われた通りに動き出した。子供の年齢層が幅広い為に、個々で机を繋げて集まる。そこから時間割に書かれている教科を勉強し始めた。  年齢ごとに分けられた机を回る先生。教科で分からない部分があれば、通りかかった先生に聞く。そうやって授業は着実と進んだ。  キンコンカンコン。  授業の時間と休憩の時間とで交互にチャイムの音が鳴る。そうして昼休みがやってきた。  自分の机は戻さない状態で、朝から母親が作ってくれた弁当を簡単に平らげる。隣の敏を見るとまだご飯を食べている最中だった。 「ご飯、食べ終わったら何するよ?」  先に食べ終えた歩は、黙々と食べる敏を気にせずに喋り出した。空っぽの弁当をランドセルの中に入れ、敏の反応を待つ。 「んーっ、何する言われても、ココ何も無いからなぁ・・・・・・」  箸を口にくわえた状態で、辺りを見渡す敏。相変わらずの毒を吐く敏に、目を丸くしなくなったのはいつ頃だろう。  “ 何も無い ”と言い放って仕舞うのは、敏が村の外から来た人間だからだ。聞いた話では、栄えていた街に住んでいたらしく父親の転勤で、この村に来たらしい。 「敏が言う通り、何も無いけどさ」  頬を膨らませふてくする歩と違い、毒舌ながらもご飯を食べる敏。栄えている街の奴らは、大体がこんな奴なんだろうかと田舎村に居る歩は思う。  ただひたすら敏が弁当を食べ終えるまで待つ歩。他の子供達はとうの昔に食べ終えていた。  呑気にグラウンド場を走り回る子供達。歩も小学六年ではあるが、今更グラウンド場を無邪気に走る程幼稚ではないのだ。  田舎村は余る程、土地が多いせいか無駄に広いグラウンド場。何のスポーツをしたって平気で邪魔にならずに遊べそうだ。  そんな阿呆な考えを思うと、敏がいきなり話し掛けてきた。
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