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「さぁて、どうするか」
四方に置かれた高灯台が暗闇を照らす中、そんな気のない声によって、集められた四人の賢人による話し合いは始まった。
最初に声を出したのは、四賢人の中でもっとも経歴の長い一白だった。たいていの話し合いはこうして一白の声によって始められる。
「人柱が見つからないことに続いて、まさか奥宮の扉まで開くとはねぇ」
一白はどこか愉快だとばかりに笑う。外見は三十そこそこの姿をしているが、人よりも流れる時間が遅い賢人にとって、見た目ほどあてにならないものはない。実際に一白は普通の人間では考えられない長い時を生きているが、浮かんだ微笑にはその時間を感じさせない軽さがあった。
「神が奥宮から出るなんて、今まで聞いたことはありませんでした……昔はあったのでしょうか?」
一白の声を受けて、不安そうに三白がその美しい眉を下げる。紅一点の賢人である三白は年頃のみずみずしさを持つ女性だったが、やはり年齢不詳の存在であった。それでも後ろで器用に結われた白い髪は、年老いた老婆にはない艶を秘めていた。
「……どうするかさっさと決めてくれ。俺はそれに従う」
続いたのは四白だった。見た目に関して言えば、一番年若い青年だ。
少し投げやりな口調は、ただ考えるのが面倒なだけとも言えるかもしれない。そのさっぱりとした短い白髪は、彼の性格を表しているようだった。
「ん~、僕の記憶が正しければ、神が出てきたなんて話は今まで聞いたことがないね」
「ではやはり、人柱がいつまでも来ないことに怒っていらっしゃるのかしら……」
「こればっかりは、人柱本人が名乗り出てきてくれないとなぁ。国中からひとりを見つけ出すのは、なかなか骨が折れるからねぇ」
「急に白くなった奴なんて、隠れようがないだろ。俺なんて村人総出で引っ張り出されたぞ」
「ははっ、賢人と違って人柱は瞳までは白くならないからね。髪ならいくらでもごまかしようがあるだろう。それに、誰かさんのように屋敷に閉じ込められていたっていう事例もあるし」
ちらりと、一白の視線が隣に向けられる。だがそれは三白の声によってすぐに戻された。
「神は、この国を恨んでいるでしょうか……」
ささやくようにこぼれ落ちた声によって、賢人たちの胸の中に同様の不安が広がる。そんな空気をごまかすようにして、一白が小さくため息をついた。
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