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第十八章 夜に啼く鳥 三
千手が、本村と話し込んでいるので、岳斗の周辺を調べていると、どうして学校の図書室のパソコンが使用されたのか分かった。
「岳斗の協力者は、子供だ……」
図書室のパソコンは操作した者を記録していて、子供の姿ばかりが残っていた。
「しかも……」
第三段階の子供は、殺されたのではなく、自分の死を悟り、仲間に託していた。
どんなに治療しても、治らない病気は存在する。第三段階の子供の一人は、自分の治療に金が掛かってしまい、他の兄弟を不幸にしてしまったと嘆いていた。親の時間も金も、自分が使い果たしてしまったのに、このまま死ぬしかない運命を嘆き、岳斗に相談した。
岳斗は、第三段階ならば、遺体が売れると持ちかけた。
「売った金は、本当に遺族に渡しているのか……」
岳斗は、遺体が役に立つという事をPRするために、幾つかの事件を起こし、注目させた。
「ただの、狂人ならば、こんなに心が痛まないのに……」
ただ、健一だけを想っている岳斗だったならば、不幸な結末になっても、自業自得で済ませられるものを、こうして事情を知ってくると辛くなる。
岳斗は自分が調べられる事を予測して、様々な記録を残していた。そして、その記録は、幾人かの治療記録を含んでいた。
「親の希望で、最後の最後まで治療地獄で終っていった子供達……」
最後に思った事は、例え寿命が明日で終ったとしても、自由に遊ぶ時間が欲しかったということ。大好きな犬や猫、祖父母、近所の公園、おもちゃ売り場、ゲームの続き、最後にたわいもない現実に戻りたかったという事。
どうにか助けたいという、親の願いを知っていたので、子供達は我儘を言えなかった。必死で治療し、力尽きて死んでいった。
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