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えーー…っと、
「近藤、綾さん……?」
放課後、委員会に行く優斗を見送り、手紙の彼がいる教室へと向かった。
偶然にも翔ちゃんと同じクラスだったらしく、部活へ行く翔ちゃんを捕まえ近藤綾とやらを教えてもらった。
翔ちゃんが示す方向を見ると、こちらを見ていたらしい彼と目があった。途端に彼の体がびくりと震える。……いやいや、そんなに驚かなくても。
翔ちゃんにお礼を言い、とりあえず彼の元へ歩みを進めた。
目の前に立ち彼を見下ろす。
──なるほど確かにかわいい。
俺よりも10cm程は低いと思われる身長に白い肌。まん丸な瞳。スカートをはかせ女子だと言われても違和感がない感じがする。
優斗が言っていたとおり、この学校での需要が窺い知れた。……というか本当に本当は女ですとかじゃないのかな。
そんな淡い希望、みたいなものを抱きながら、返事を……と切り出すと、ここで!? とあたふたされたので、とりあえず目の前の彼に案内されるがまま移動することにした。確かにデリカシーがなかったか。
そして、つれてこられたの食堂の片隅。まだ16時台ということもあって、人はほとんどいなかった。
来るのは2回目だけど、やっぱり高校の食堂とは思えないほど豪華絢爛だ。
「あ、あのっ、の、飲み物、とか……」
顔を赤くしてタッチパネル(これでオーダーができる)を操作する近藤を眺めながら、こいつは本当に俺のことが好きなのかも、と、なんとなく思う。
女の子に告白された時も、こんな態度の子がいた気がする。
あの時はかわいいなぁ、なんて思ってたけど、
(──まぁ、かわいいのはかわいいか)
男でもこんなに一生懸命になっている姿はなんとなくかわいいなと思った。近藤の容姿だからかもしれない。……なんにせよ付き合うとかは別だけど。
「じゃあアイスティー」
「わ、わかった!」
「あ、俺払うよ」
そういえば食堂での支払いは全部学生証でやるんだっけ、とポケットの中の生徒手帳から取り出そうとすると、少しは落ち着いたらしい近藤に「来てもらったんだから僕が払うよ」と微笑まれた。いいやつだ。
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