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side:kondo
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入学式で初めて彼と出会った時、一瞬で気持ちが掠われていくのがわかった。
ほんの一瞬の出来事。
肩がぶつかり、すみませんと謝られた。
たったそれだけ。
少女漫画やドラマのはじまりにありがちなシーンに、まさか自分が共感する日がくるだなんて思わなかった。
惚けている僕に不思議そうにしている姿に気づいて、慌ててこちらも謝ったけれど、気づいたらもう彼は一緒に行動しているらしい斉藤くんにひっぱられていなくなっていた。
たったそれだけ。
それだけの出来事。
それなのに、僕の目はそれからずっと、彼のことを追うようになっていた。
(……斉藤くんの、知り合いなのかな?)
程々に高い身長に、淡く茶色い髪の毛。
無表情の時には綺麗だけど少し冷たく感じた横顔も、隣にいる斉藤くんに笑いかける時はすごく穏やかで、途端に柔らかい印象にかわった。
周りもそれは一緒のようで、彼を見ては楽しそうにひそひそと話している。
この学園では見た目が良いととにかくもてはやされる。こんな環境では、それくらいしか楽しみがないのだ。
今までに見かけたことがない顔。おそらく高校からの外部生。
この学園はエスカレーター式で、中学から高校に上がる際も一応形式的な進学試験がある程度だ。でも、外部からの入学試験になるとその難易度は格段にあがり、外部生として入学してくる生徒は毎年多くても3人前後。いない年もあるくらいだ。
その試験に合格したということは、おそらく頭も良いのだろう。
──親衛隊ができるのも、時間の問題かな。
そんなことを考えながら、少し先の斜め前に座る彼の横顔を眺めていた。
(………かっこいい、なぁ)
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